こんにちは!秋田市の古本屋「板澤書房」です。
今回の「板澤書房とめぐる秋田人物探訪」では、僧侶でありながら、遠くヒマラヤを越え、鎖国状態だったチベットへ足を踏み入れた、秋田出身の偉大な先人、多田等観(ただ とうかん)(1890-1967)をご紹介します。
「秋田にそんなすごい人がいたの?」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。今回は、その波乱に満ちた生涯と関連書籍について、ご紹介します。
仏道と学問の道、チベットへ:多田等観とは?
多田等観は、明治23年(1890年)、現在の秋田市土崎港に生まれました。若い頃から仏門に入り、真宗大谷派の僧侶となります。
彼の運命を大きく変えたのは、当時中央アジアへの探検・研究を積極的に進めていた浄土真宗本願寺派の大谷光瑞(おおたに こうずい)でした。その大谷光瑞のもとで学んだ多田等観は、本格的な仏教研究のためチベットへ渡ることを決意します。
当時のチベットは、清朝の影響下にあり、またイギリスとロシアの勢力争いの舞台ともなっていた複雑な国際情勢から、入境は極めて困難な状況でした。ヒマラヤ山脈を越えるという、想像を絶する困難な道のりを経て、翌大正2年(1913年)、ついに首都ラサへの到達を果たしました。これは、河口慧海に次ぐ、日本人として二人目の快挙でした。
ラサに到着した等観は、チベット仏教の最高学府セラ寺に入門。現地の僧侶たちと共に厳しい修行と学問に励みます。
約10年間にわたるチベットでの滞在で、多田等観は仏教学者として精力的に活動し、帰国時には24000点余りの膨大な量のチベット語仏典や貴重な文献などを持ち帰りました。中でも特筆すべきは、当時、原則としてチベット国外への持ち出しが許されていなかった「デルゲ版チベット大蔵経」。これらの第一級の資料は、それまで限られた情報しかなかった日本の仏教学、特にチベット学の研究を飛躍的に進歩させる、計り知れない貢献をしました。
大正12年(1923年)に帰国した後は、東京大学などで教鞭をとる傍ら、持ち帰った貴重な資料を整理し研究を進めました。東北帝国大学(現・東北大学)の教授陣と共に、世界で初めてとなる『西蔵大蔵経総目録』を刊行。その後『西蔵撰述仏典目録』も刊行し、東洋文庫チベット学研究センターで研究と後進の育成にあたりました。
多田等観の関連書籍
多田等観の関連書籍には以下のようなものがあります。
チベット(岩波新書)
- 著者:多田等観
- 出版社:岩波書店
多田等観自身が、チベットでの体験をまとめた入門書です。厳しい自然、文化、人々との交流が生き生きと描かれています。新書なので比較的入手しやすいと思います。
チベット滞在記

- 著者:多田等観 著、牧野文子 編
- 出版社:白水社、講談社(講談社学術文庫)
『チベット』よりも詳細に、ラサでの生活やセラ寺での学問、ダライ・ラマ13世との交流などを記した一冊。多田等観の研究者としての一面や、当時のチベット社会を深く知ることができます。白水社からは原本(写真参考)や新装版が、講談社からは学術文庫版として刊行されています。
多田等観全文集 : チベット仏教と文化

- 著者:多田等観 著、今枝由郎 監修・編集
- 出版社:白水社
多田等観が発表した論文やエッセイなどを集めた、業績を知る上で重要な書籍です。専門的な内容も含まれますが、そのチベット研究の全貌に触れることができます。
チベット仏像、仏画図録 多田等観請来

- 請来者:多田等観
- 出版社:蔵脩館
多田等観がチベットから持ち帰った貴重な仏像や仏画を収録した大型の図録です。47枚の美しい図版と解説で構成されており、チベット美術の粋に触れることができます。ちなみに、出版社の「蔵脩館」は岩手県花巻市にありますが、ここは多田等観が戦時中に実弟(光徳寺住職)を頼って疎開し、貴重な資料を保管していた縁の深い場所でもあります。
外箱や内箱、解説冊子といった付属品が揃っているかどうかも、査定における重要なポイントになります。
多田等観(漫画)

- 著者:三船毅志
- 出版社:多田等観顕彰会
多田等観の波乱に満ちた生涯を、親しみやすい漫画で描いた作品です。彼の功績を分かりやすく知ることができるため、入門編としてもおすすめです。郷土の偉人を知るきっかけになる一冊。著者署名入りのものなども見かけることがあります。
多田等観資料展図録 秋田の先人

- 編者:秋田市立赤れんが郷土館
- 出版社:秋田市立赤れんが郷土館
過去に秋田市立赤れんが郷土館で開催された多田等観に関する展覧会の図録です。写真や資料図版が豊富に掲載されており、彼の生涯や業績、持ち帰った品々を視覚的に理解することができます。展覧会図録は発行部数が限られていることが多く、後年入手が難しくなることもあります。
古本屋で見つける、ふるさとの記憶:多田等観との再会
古本屋の棚を眺めていると、ふとしたきっかけで昔の記憶が呼び覚まされることがあるのではないでしょうか。お客様が棚の前で「あっ」と声を上げられる瞬間は、私たちにとっても嬉しいものです。それが、遠い昔に触れた郷土の偉人の物語だったりすると、感慨もひとしおです。
以前、若い方が三船毅志さんの漫画版『多田等観』を手に取り、「これ、小学生の時に図書室で読んだ記憶があります!懐かしい…」と、少し興奮気味に話してくださったことがありました。子供の頃に触れた物語が、大人になって郷土の偉人の功績として再び繋がる。そんな素敵な「再会」の瞬間に立ち会えるのも、古本屋ならではの体験かもしれません。
また、別の日には、ご年配の女性が郷土史の棚の前で、「祖父がね、昔よく『土崎からチベットさ行ったすごいお坊さんがいたんだ』って話してくれたのを思い出して…多田等観さんっていうのねぇ」と、感慨深げにおっしゃっていました。「どんな方だったのか、もっと知りたくなって」と、関連書籍を手に取られていた姿が印象的でした。家族の語り継いだ記憶が、時を経て本へと繋がり、人物への関心を深めていく。本にはそんな力があるのだな、と感じ入った出来事です。
多田等観の功績のスケールの大きさを物語るものの一つに、持ち帰った資料があります。特に『チベット仏像、仏画図録 多田等観請来』という大型の図録。仏像や仏画を収めたもので、貴重な資料として知られています。そもそも出版された部数もかなり限られていたようで、古書市場で見かける機会は多くはありません。当店でも、扱わせていただく機会は限られています。こうした実物(の記録)に触れると、遠いチベットでの奮闘ぶりがよりリアルに感じられます。
子供の頃の記憶、家族の思い出、そして希少な古書との出会い。様々な形で、多田等観という人物は、今も私たちの知的好奇心を刺激し、ふるさと秋田への想いを新たにさせてくれます。そんな「再会」や「発見」のお手伝いができることは、町の古本屋としての大切な役割なのかもしれないな、と感じています。
秋田県内にある多田等観ゆかりの地(記念碑)
西船寺
境内には墓があります。
「探求の記録」や「寺院の蔵書」、板澤書房へ
今回は、秋田が誇る僧侶であり仏教学者、多田等観をご紹介しました。その生涯は、強い意志と探求心があれば、どんな困難も乗り越えられることを教えてくれます。多田等観が命がけで持ち帰った知識や文化遺産は、本という形で今も私たちに多くのことを語りかけてくれます。
板澤書房では、多田等観の著作や関連書籍、チベット関連の研究書、仏教書、探検記、そして秋田の郷土史に関する古本・古書を誠実買取しております。
「書斎を整理していたら、昔読んだ多田等観の本が出てきた」
「家族が集めていたチベット関係の本があるけれど、価値が分からない」
「専門的な仏教書だけど、買い取ってもらえるだろうか?」
「お寺の書庫を整理したいのだけれど、古い和本や仏教書が多くて…」
そんな古本・古書がございましたら、ぜひ一度、板澤書房にご相談ください。多田等観のように仏教にゆかりの深い方の蔵書はもちろん、お寺様で不要になった書籍や資料なども、丁寧に査定させていただきます。
たとえ古い本であっても、書き込みやシミがあっても大丈夫です。量が多い場合や、重くて運べないといった場合もご安心ください。秋田県内・近郊であれば、無料での出張買取も承っております。
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古ほんや板澤書房
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